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今月の薬草
エゾウコギ
Eleutherococcus senticosus Maximowicz ( ウコギ科 )
エゾウコギ Eleutherococcus senticosus Maximowicz (ウコギ科)花 エゾウコギ Eleutherococcus senticosus Maximowicz (ウコギ科)果実
果実

エゾウコギ Eleutherococcus senticosus Maximowicz (ウコギ科)芽生え
芽生え
 北海道からロシア,中国北部に分布し,やや湿り気のある林床や林縁に生育する夏緑広葉樹です。雌雄異株。樹高は3〜5m,枝にはやや下向きの細く鋭い針状の刺を密生しています。葉は互生し有柄,葉身は小葉が3〜5枚の掌状複葉です。また各小葉は長楕円形から倒卵状楕円形で先端は細長く尖り,両面,特に裏面の葉脈には毛が密生しています。花は淡黄緑色で枝の先端に散形状につき,夏に咲きます。果実は楕円状で秋に黒紫色に熟します。しかし多くの植物のように果実は熟していても,種子はそのままでは発芽できない特性があります。種子中の胚は未熟な状態にあるため,秋に地上に落下した果実(種子)は翌年の春から秋にかけて胚が成熟します。そしてその冬の低温に感応し,果実が熟してから翌々年の春になってやっと発芽することになります。この様な種子を後熟性種子といいます。
 和名は北海道(蝦夷)に生育するウコギの意味からエゾウコギといいます。薬用には根皮を用います。生薬名を“シゴカ(刺五加)”といい,滋養・強壮薬とします。薬用効果がニンジン(人参::オタネニンジン Panax ginseng C.A.Meyer)と類似していることから,別名を“シベリア人参”ともいいます。生薬名はウコギの漢名である五加と茎に生じる鋭い針状の刺とに由来しています。因みに学名のsenticosusも鋭い刺を意味しています。
 エゾウコギは北海道に自生が確認されていたものの,アイヌの人たちは薬用として利用していませんでした。また北海道を開拓した農民や屯田兵たちも,鋭い刺が密生しているエゾウコギを開墾の障害になるといって嫌っていたほどでした。中国でも利用の歴史は浅く,世界の注目を浴びるようになったのは,モスクワオリンピックに参加したソ連(現ロシア)選手や宇宙飛行士たちが用いていたという報道以後です。その後,日本でも健康食品として利用されてきましたが,日本薬局方に収載されたのは第十五改正からですので最近のことになります。個人的な好みですが,芽生えは特有の風味があり大変美味しい山菜でもあります。生薬や健康食品としての利用だけではなく,山菜としての利用価値も大いにあるのではと考えています。(磯田 進・鳥居塚 和生)

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