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今月の薬草
ワタ
Gossypium spp ( アオイ科 )
ワタ Gossypium spp (アオイ科)カイトウメン 花 ワタ Gossypium spp (アオイ科)リクチメン 花
カイトウメン 花 リクチメン 花

ワタ Gossypium spp (アオイ科)リクチメン 果実
リクチメン 果実
 世界各地の熱帯または亜熱帯地域に約40種が分布し,繊維作物として世界各地で栽培する多年生草本植物です。しかし栽培上,または温帯では気候の関係で一年生となります。現在栽培されているワタは古い時代から種々の品種を交配させて改良されているため,大きくリクチメン(陸地綿),カイトウメン(海島綿),アジアメン(亜細亜綿)に分けられ,さらにアジアメンはシロバナワタ(白花綿)とキダチワタ(木立綿)に分けられています。因みに日本で栽培されているワタは,シロバナワタの系統になります。日本での栽培は延暦18年(799)が最初といわれていますが,本格的な栽培は江戸時代に入ってからのようです。
それまでの綿製品は庶民の間では入手できないくらい高級品でした。しかし栽培化が進み生産量が飛躍的に増大するに伴い,庶民でも綿の布団に寝られるようになったということです。葉は通常,掌状に3〜5裂し,長い柄をつけます。花は淡黄色が一般的ですが,白色または赤から黄色味を帯びている種類も見られ夏に咲きます。果実は球状で先端がやや尖り,秋に熟し開裂して白毛を密生した種子がはじき出されます。
 和名は漢名の草綿に由来するなど諸説あり,語源は定かではありません。薬用には種子に生じる毛を用います。通常は少量含まれる油脂や蝋物質などを取り除き,さらに漂白して脱脂綿などの衛生材料とするほか,糸状に撚ってガーゼなどに加工して利用します。また布団などの保温材や衣服の素材として私たちの生活になくてはならないものとなっています。繊維を収穫した残りの種子からは油脂が得られ,食用油(綿実油)のほか,マ−ガリンや石鹸などの原料とします。
 使用する毛は種子の表皮細胞の一部が糸状に変形したものですが,生命活動に必要な原形質を欠き空洞となっています。また種類によって毛の長さが異なり,リクチメンやカイトウメンの毛は長いことから,紡績用に向いています。一方,アジアメン系は毛が短いため強度が強く,布団などに用いる綿として利用することが多いようです。一口に綿といっても多くの品種があり,またそれぞれに特徴がありますので,用途に合った品種が利用されています。(磯田 進・鳥居塚和生)

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