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今月の薬草
ラッカセイ
Arachis hypogaea L. ( マメ科 )
ラッカセイ Arachis hypogaea L. (マメ科)花 ラッカセイ Arachis hypogaea L. (マメ科)果実
果実

ラッカセイ Arachis hypogaea L. (マメ科)果実内部(上:普通の品種、下:大きな品種)
果実内部(上:普通の品種、下:大きな品種)
 南アメリカのボリビア原産の一年生草本植物です。本来はインディオの重要な食品の一つでしたが,紀元前には中央アメリカでも栽培されるようになりました。その後,コロンブスの新大陸発見にともないヨーロッパに紹介され,現在では食用や油脂原料植物としてアメリカや中国など世界各地で栽培されています。日本へは江戸時代に中国より長崎に渡来しました。日本で初めて栽培したのは神奈川県二宮町といわれ,本格的な栽培は明治時代に入ってからです。草丈は60cmくらい,茎は地際よりよく枝分かれします。葉は互生し,葉身は4枚の羽状複葉です。花は黄色で夏から秋にかけて咲き,受精後は子房の一部が伸びて地中に入り,その先端が長楕円形に肥大します。しかし地中に入れなかった子房は肥大せず枯死してしまいます。どうもラッカセイの果実は,暗いところが大好きな習性があるようです。通常,果実には1〜3個の種子を生じます。
 和名は漢名の落花生を音読みしたもので,上記のように果実が生じる特徴から名づけられました。因みに学名の種小名(hypogaea)も地中に生じるという意味があります。また別名の南京豆は中国から渡来したことに由来し,ピーナッツは英名のpeanutによるものです。薬用には種子から得られる脂肪油を用い,ラッカセイ油といいます。通常は種子を粉砕した後,蒸気で加熱し圧搾して採油します。ラッカセイ油の特徴は香りがあまりなく,微黄色透明です。他の脂肪油と比べて酸化されにくい特徴があり,主に軟膏や硬膏などの基材,リニメント剤などに使用します。また食材としてバターピーナッツやピーナッツ・バターやなどの食品として多量に消費されています。最近,従来のラッカセイと比べ,果実の大きさが数倍ある品種が千葉県で育成され話題になっています。(個人的には塩茹でしたこの大きなラッカセイが好みです。)
 食品が原因となったアレルギーが大きな社会問題となっています。ある特定の食品を食べることによって生じるものですが,そのアレルギーの起因となる食品にはエビやカニなどの魚介類,牛乳や卵などの動物性の食品をはじめ,植物由来の食品など食物全般にわたっています。植物アレルギーは著名なものに,ソバやキク科植物などが知られています.ここで取り上げたラッカセイもアレルギーを起こす方が多い食品の一つです。身近な食材故,安易に考えがちですが,時には生命にかかわるようなこともあります。十分に注意したいものです。(磯田 進・鳥居塚 和生)

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