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今月の薬草
ハス
Nelumbo nucifera Gaertner ( スイレン科 )
ハス Nelumbo nucifera Gaertner (スイレン科)花 ハス Nelumbo nucifera Gaertner (スイレン科)根茎内部
根茎内部

ハス Nelumbo nucifera Gaertner (スイレン科)果実
果実
 ヨーロッパ東南部からオーストラリア北部,アジアにかけて分布する水生の多年生草本植物です。古い時代から各地で栽培されているため,自生種か,または栽培や逸脱したものか,その判別は難しいようです。千葉県の落合遺跡で発掘された大賀ハスは今から2000年以上も前の古代のハスと推定されていますが,文献上での記載は日本最古の歴史書である「古事記」が最初といわれています。根茎は肥厚して内部は白色で穴があり,各節はくびれて芽や細根を生じます。葉は円形で大きく,上面には乳頭状の毛が密生しています。葉柄は長く,葉に盾状についています。花は淡紅色から白色のことが多く,夏に咲きます。よくポンと音を立てて開花するといわれていますが,残念ながら俗説で音は生じません。花托は蜂の巣状となり,卵形で硬い果実が生じます。最近は植物学的にはスイレン科から独立させ,ハス科に分類する学説が有力となっています。
 和名は古名のハチス(蜂巣)より転訛したもので,果実が生じる花托を蜂の巣に見立てたことによるものです。蜂の巣といってもどう猛なスズメバチなどの球状の巣ではなく,身近に見られるアシナガバチの巣にとてもよく似ています。薬用には通例,胚を取り除いた完熟種子を用い,生薬名をレンニク(蓮肉)といいます。主に滋養・強壮薬としますが,その他,薬膳料理や月餅の餡などの食材とします。
 ハスは古くから食材としても利用していますが,日本ではどちらかといえば種子より根茎を多く利用しています。食材として利用する場合はレンコン(蓮根)と名を変え,酢物やお煮染めなどに用います。収穫時のレンコンは芽を生じていることが多く,容易に上下を区別できます。ところが薄く輪切りにして調理してしまうと,その区別はなかなか難しいものです。しかしよく観察すると穴は大きなものが7個くらい,やや小さめのものが2個並んでいることが分かります。根茎が変形している場合は潰れているため判然としませんが,やや小さめの穴が2個並んでいる面が上になります。また三角おむすびを逆さにした,本来は底辺であった方が上になります。因みにこの孔は,葉の中心にある白い模様より空気を取り入れています。楽しい話題は一品の料理に等しいといわれています。楽しい食卓にレンコンの穴の話題を一品に添えてみてはいかがでしょうか。(磯田 進・鳥居塚 和生)

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