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今月の薬草
モッコウ
Saussurea lappa CLARKE ( キク科 )
モッコウ Saussurea lappa Clarke (キク科)花
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 インド北部のカシミール地方に分布し,1m以上になる大型の多年草です。分布域が狭く,自然の状態では絶滅が心配され,現在はワシントン条約により自生株の国際間における商取引は規制の対象となっています。そのため薬用として利用する生薬は,中国の雲南省などの高原で栽培されています。日本でも資源的な面から,冷涼な北海道で試験栽培が試みられています。根は太く,特異な香りがあります。根生葉は長楕円状ひ針形で長い柄を生じ,茎につく葉は柄がなく茎を抱いています。花はアザミに似て暗紫色を呈し,茎の上部について夏に咲きます。
 和名は漢名の木香をそのまま用い,乾燥した根は太くて木のように堅く,香りがあるところから名づけられました。生薬名もモッコウ(木香)といい,消化不良や胃アトニー,胃下垂などの改善を目的とした芳香性健胃薬として用います。また帰脾湯(きひとう)や女神散(にょしんさん)などの漢方処方にも配剤されています。薬用以外の利用では,お香の薫香料とすることもあります。
 最近,生活に潤いを求めてガーデニングに人気が集まっていますが,特にバラの栽培は人気の一つとなっています。中でも蔓性のモッコウバラは皆から嫌われる刺もなく,病気や害虫などに対しての抵抗性が強い上に成長が早く,黄色や白色の八重の花を多数つけるため初心者にはお奨めのバラといえるでしょう。フェンスなどに絡んで咲く様子は明るく清々しい初夏のイメージを醸しだし,特に秋篠宮家の眞子様のお印となってからは人気が急上昇しました。その語源は種々ありますが,一説には花の香りが生薬のモッコウ(木香)に類似していることから名づけられたということです。一般的に香りは黄色種より白花種の方が強いといわれています。しかし白花種の香りも他のバラと比べ,さほど強いというわけではありません。モッコウバラの名前は栽培されていない方でも,ご存知の方が多くなってきました。しかし語源とされるモッコウについてはほとんど関心を持って頂けず,薬用植物を専門とする一人として残念でなりません。(磯田 進・鳥居塚 和生)

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