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今月の薬草
クマコケモモ
Arctostaphylos uva-ursi Ericaceae ( ツツジ科 )
クマコケモモ Arctostaphylos uva-ursi Ericaceae (ツツジ科)花
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 北半球の高緯度地方や高冷地に生育している常緑の小低木で,茎は低く伏して伸長します。日本でも長野県側の八ヶ岳で記録されていますが,その後その株は枯死してしまったと言われ,自然(隔離)分布か人為的なものか不明です。葉は互生し,葉身は厚みがあり革質,鈍頭または凹形で倒卵状からへら状です。花は淡紅白色,小さなつぼ状で春から初夏に咲きます。果実は球状で秋に紅熟します。日本には同属(研究者によっては別属とする)で高山植物のウラシマツツジが生育していますが,落葉性で花は黄白色,果実は黒紫色に熟し,秋に葉は美しく紅葉して登山者の目を楽しませてくれます。
 生薬名はウワウルシといい,学名のuva-ursiからきています.このuva-ursiという語句は,クマのブドウという意味で,属名のArctostaphylosも同様にクマのブドウという意味があります。この植物の仲間は秋になると果実が大変美味しくなるため,冬眠を間近にしたクマが好んで食べることに由来しています。英名もbear-berry(クマの果物)といいます。生薬としてウワウルシは尿路殺菌を目的としたウワウルシ流エキス(日局)の原料とします。過去に近縁植物のコケモモも同じ有効成分を含有していることから同様に利用していましたが,この植物も高山に分布生育するため,自然保護の観点より第七改正日本薬局方から削除されました。
 女の子の成長を願う行事に雛祭りがあります。いつまでも美しい素肌であることを願い,お雛様のお顔は昔から貝を粉末にして糊料で固め,皺やシミなどが生じないよう丁寧に色白の顔に仕上げています。まさに職人の技といったところです。色白でシミのない美しい素肌は,古今東西,女性の憧れの的でもあり,そのため多くの化粧品が市販されています。クマコケモモに含まれている尿路殺菌作用のあるアルブチンにはメラニン色素の生成を抑制させる効果が報告され,最近ではこの抑制効果を応用した化粧品を目にすることも多くなってきたように思います。
 クマコケモモは淡紅色を帯びた白い花が特徴です。また,その他のアルブチンを含んでいる植物には,ツツジ科のコケモモやバラ科のナシなどがあります。偶然でしょうか?これらの植物はいずれも白い花をつけるという共通点があります。美白効果を人間より先に実証してしまったようです。(磯田 進・鳥居塚和生)

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