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今月の薬草
ダイウイキョウ
Illicium verum HOOKERfil. ( シキミ科 )
ダイウイキョウ Illicium verum HOOKER fil. (シキミ科)花
 ベトナムや中国南部原産。熱帯アジアを中心に香辛料として栽培されている常緑高木です。日本では薬用植物園などの温室で展示用に植栽されています。墓地などに植栽されているシキミと同じ仲間になります。原産地や栽培地などでは樹高は15mくらいになり、葉はシキミに似て革質で光沢があります。花は2〜3月と9〜10月に咲き、白色から紅色を呈しています。果実は芳香があり、袋果が星状に並んでいます。また熟すと開裂し、中から扁球形で光沢のある茶色の種子を生じます。
 和名のダイウイキョウは大茴香の意味があり、果実の芳香がセリ科のウイキョウ(茴香)に似ている上、ウイキョウと比べて大きいことから名づけられました。またその形状から八角茴香ともいい、中華料理には欠かせない香辛料の一つでもあります。英名をスターアニスといいますが、こちらは果実の形が星形を呈し、その芳香が香辛料として利用されているセリ科のアニスに類似していることによるものです。薬用にはやや未熟な果実を用い、芳香性健胃薬、興奮薬とします。また蒸留して得られる精油は、ダイウイキョウ油といい香料として利用します。
 メキシコから始まった豚インフルエンザは、私たちの予想よりかなり速く人から人への感染が確認されてしまいました。その結果、新型インフルエンザと名を変え、私たちの生活に大きな影響を与えていますが、季節性インフルエンザの治療薬であるタミフルにも新型インフルエンザに対し同様の効果が確認されました。このタミフルはダイウイキョウの果実に含まれているシキミ酸(芳香性の成分ではありません)から合成されていますが、最近はその生産地である中国の出荷価格が暴騰し、タミフルの生産に支障をきたし始めているという報道がありました。そのため専門家だけではなく、その動向には、一般の人たちの関心も集まりました。幸い新型インフルエンザの流行も下火になり、ホット一息といったところです。意味は少し異なりますが、ダイウイキョウは直接的または間接的な意味でも薬食同源の代表的な生薬といえるのではないでしょうか。(磯田 進・鳥居塚 和生)

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