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今月の薬草
コガネバナ
Scutellaria baicalensis GEORGI ( シソ科 )
コガネバナ Scutellaria baicalensis GEORGI (シソ科)花
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 中国北部からシベリア東部,朝鮮半島にかけて分布する多年草で,薬用として栽培されています.山草として人気のあるタツナミソウと同じ仲間になります.草丈は60cmくらい,茎は叢生し,根の外皮は褐色を帯びていますが,内部は淡黄色を呈しています.葉はひ針形で対生し,花は青紫色で茎の上部に穂状につけて夏に咲きます.果実は球状で小さく,秋に黒色に熟します.
 和名は花の色ではなく,根の内部の色が淡黄色であるところから名づけられました.日本へは享保年間に渡来しました.小石川植物園に残されている「薬草木書留」(1791・寛政3年)によれば,享保11年(1726)に朝鮮半島より種子を取り寄せたとの記録が残されていますが,これは八代将軍の徳川吉宗(1684―1751)が実施した生薬の国産化の一環によるものです.薬用には根を用い,多くは外面のコルク層を剃り落としてあります.生薬名をオウゴン(黄芩)といい,止瀉整腸薬,解熱鎮痛消炎薬と見做される漢方処方の黄連解毒湯,小柴胡湯,三黄瀉心湯,防風通聖散などに配剤されています.
 植物の和名は,その特徴を語源とすることが多く,例えば花の色が「黄色」であればキバナオウギやキツリフネ,キバナアキギリ,キンバイソウなど,紅色系統であればベニバナを始めとしてアカツメクサ,アカバナ,ベニバナヤマシャクヤクなどがあります.一方,花以外の部位に起因する和名にはコルク層の内側が黄色いキハダ,根が赤いアカネなどがあり,その語源は比較的理解しやすい名称となっています.ところがコガネバナは名称に反し,花の色は青紫色です.本来の意味は生薬名または根の色から名づけられたものですが,「ハナ(花)」が付いてしまうことから混乱する方が多いようです.そのため牧野富太郎先生は葉がヤナギのように細いことから,別名のコガネヤナギ(黄金柳)という名称を採用しています.最近は花の美しさと栽培し易いため,観賞用として栽培されることが多くなり,学名の種小名(baicalensis)からバイカルタツナミソウと呼ぶこともあります.植物を理解するために,和名の語源を調べるのも一つの方法ですね.(磯田 進・鳥居塚 和生)

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