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今月の薬草
スイカズラ
Lonicera japonica THUNB. ( スイカズラ科 )
スイカズラ Lonicera japonica THUNB. (スイカズラ科)花
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 日本各地から朝鮮半島,中国にかけての地域に分布する半常緑の木質のつる性植物です。近年はヨーロッパや北アメリカにも帰化し,特に北アメリカでは有害な雑草として問題になっています。全株短毛を生じ,葉は長楕円形で時には羽状に切れ込むこともあります。花は甘い芳香を生じ,葉腋に2個並んでついて初夏から夏に咲きます。始め白色ですがしばしば淡紅色を帯びることもあり,その後は淡黄褐色になります。また開花とともに甘い芳香を生じますが,その芳香は昼間より夜間の方が強いようです。これは夜行性の蛾の仲間によって,受粉が行われるためです。果実は球状で光沢があり,秋から初冬にかけて黒紫色に熟します。
 和名のスイカズラとは「吸蔓」の意味があり,「花の基部から甘い蜜を吸う際の唇と花がとても似ている」説と「ただ単に甘い蜜を吸ったことから」という説など諸説ありますが,どちらにしても甘い蜜に由来しています。生薬名は葉をニンドウ(忍冬),花をキンギンカ(金銀花)といい,ともに民間薬として利尿や解熱,また煎液をうがい液として利用します。
 諸外国との交易や交流が頻繁になるに従い,多くの植物が浸入してきました。その中で日本の風土に合い,定着した種類を帰化植物と呼んでいます。最近はオオキンケイギクやオオハンゴンソウ,アレチウリなどのように,その旺盛な繁殖力から本来の生態系を乱し,農作物に被害を与えるとしています。平成17年10月に「特定外来生物法」という法律が施行され,外来の動植物の防除や駆除の取り組みが始まりました。一般には帰化植物といえば,外国から渡来した植物との見方で捉えられがちです。しかし逆に日本から世界に伝播し,多くの国々に帰化してしまった植物もあるのです。スイカズラもそのような植物の一つです。19世紀初めに園芸植物としてヨーロッパや北米に渡りました。ところが欧米の風土に合ったのでしょうか,住宅街から郊外の牧場や森林地帯へとその生育地域を広げ,ナイアガラの滝の周辺では生態系を乱す帰化植物として,地元の人たちからは,厄介者あつかいをされてしまっているそうです。(磯田 進・鳥居塚和生)

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