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今月の薬草
ショウヨウダイオウ
Rheum palmatum LINN. ( タデ科 )
ショウヨウダイオウ Rheum palmatum LINN. (タデ科)花
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 中国原産の多年生草本植物です.四川省や青海省などに分布し,標高3,000〜4,000mの高原地帯に生育しています.最近は中国だけではなく,日本でも薬用として北海道などで栽培するようになりました.草丈は花茎を含めると1.5〜2.0 mに達します.葉は長い柄を持ち,葉身は心臓形をして大変大きく,径は50 cm以上にもなります.花は淡黄緑白色から淡紅色で初夏から夏にかけて咲き,果実には翼があります.根茎は球状で大きく,内部は鮮黄色を呈しています.
 和名のショウヨウダイオウは漢名の掌葉大黄をそのまま用いたもので,手のような形状をした葉を持つダイオウの意味があます.また大黄という名称は,株全体が大きく根茎も時に子供の頭部ほど大きくなり,その内部が鮮黄色を呈していることから名づけられました.薬用には根茎を用います.生薬名をダイオウ(大黄)といい,瀉下薬や高血圧症用薬などとみなされる漢方処方に配剤されている他,便秘改善薬としても用いられています.中国の古い本草書である神農本草経には当時の医薬品365種を収載していますが,ダイオウは作用が激しいことから長期間服用してはならないと記載されています.そのような強く激しい薬効から,「将軍」という異名もあります.
 食の多様性からイチゴや柑橘類などだけではなく,多彩な素材のジャムが店頭に並んでいます.そのひとつにシベリア南部原産といわれているショクヨウダイオウ(食用大黄)のジャム(こちらは葉柄を用います)があり,ルバーブジャムと呼ばれています.ヨーロッパでは古くから酸味が好まれ利用されています.薬用ダイオウと比べ比較的標高の低い地域でも栽培できることから,日本でも食品の素材として栽培されています.最近は山梨県や長野県などの観光地だけではなく,都会のスーパーなどでも生の葉柄を目にすることが多くなりました.レシピは葉柄を適当な大きさに切り,砂糖を加えて暫くおいてから弱火で煮込むだけで完成です.食用ダイオウは薬用としては用いられませんが,しかし時として,あたかも薬用ダイオウの効能があるかのように謳っていることがあり,消費者に誤解を与えることが懸念されます.食用ダイオウは,あくまでもその爽やかな酸味と風味が身上です.
 生薬のダイオウは医薬品として極めて重要なものですが,一方では,その仲間の植物は食品として私たちの食生活にかけがえのない潤いを与えてくれています.
(磯田 進・鳥居塚 和生)

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