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今月の薬草
ニチニチソウ
Catharanthus roseus L. ( キョウチクトウ科 )
ニチニチソウ Catharanthus roseus L. (キョウチクトウ科)花
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 アフリカのマダガスカル原産.世界各地で観賞用に栽培されている一年草ですが,原産地や熱帯地方では多年草となります.葉は対生し,葉身は長楕円形,花は夏から秋にかけて枝先に次々に咲き続けます.園芸的に多くの品種が育成されているため,白色やピンク,赤色,紅紫色など多彩です.また乾燥や排気ガスなどには比較的強いことから,庭や公園だけでなく道路沿いの植え込みなどにもよく植栽されています.どこかで必ず目にしている身近な植物といえましょう.日本への渡来は江戸時代中頃の安永から天明時代(1772-89)といわれています.ニチニチソウという和名は日々,次々と新しい花に咲き代わることから名づけられました.ニチニチカ(日々花)とも言われます.
 近年,この植物に含まれている成分(特に根に多く含まれる)には抗悪性腫瘍作用があることが基礎研究で明らかとなりました.この抗ガン剤は臨床的にも有用性が高いため,よく利用されている医薬品の一つとなっています.しかしながら副作用や毒性なども認められますので,医療用医薬品として医師の診断に基づいて使用するものであり,一般の方が気軽に用いる薬草というわけではありません.なお観賞用の植物では,園芸用として改良が加えられるに従い有効成分の含量が少なくなっています.医薬品の製造にあたっては,有効成分を得るために野生種を栽培することで対応しています.
 ニチニチソウは園芸植物として最も栽培しやすい種類の一つですが,あまり手をかけすぎると失敗することもあります.元来,この植物は強い日差しと厳しい乾燥がある環境を自生地としていますので,発芽温度や生育適温は25℃くらいと他の植物と比べ比較的高いのです.そのため湿り気が強く日当たりの悪いところでの栽培や,水を多く与えたりすることは避けた方がよいでしょう.また高地など涼しい環境ではあまり大きな株に育たないばかりではなく,花つきもよくないようです.花が咲いている期間がより長くなるよう育種されているため,肥料は月に一度くらいリン酸分の多い化成肥料を少量施肥するように心がけるとよいでしょう.窒素分が過多になると花のつきも悪く葉だけが多くなり,花も小さくなってしまいます.何事にも通ずることですが,過保護にも放任にも気をつけたいものです.
 花言葉は「楽しい思い出と揺るぎない献身」です.ニチニチソウは,多彩な美しい花を毎日咲かせて我々の目を楽しませてくれています.また抗ガン剤としての効果は当に私たちに対して献身的な作用といえます.(磯田 進・鳥居塚 和生)

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