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今月の薬草
イネ
Oryza sativa LINNE ( イネ科 )
イネ Oryza sativa LINNE (イネ科)
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 熱帯アジア原産で,日本へは古い時代に農耕文化とともに中国を経て渡来しまた。主にアジア各地で栽培され,近年はアメリカやオーストラリアなどでも栽培されるようになってきました。温帯では一年草ですが,冬期のない熱帯では多年草となることもあるようです。日本での栽培は,4月下旬に苗床に播種し育苗し,5月下旬から6月にかけて水を張った水田に定植(田植え)します。その後は水の管理や除草を行い,8月から9月にかけて出穂,開花し,10月に収穫します。その間の農作業は機械化が進んだとはいえ,現在でも多くの労力を必要としています。また栽培法により水田で栽培する水稲と畑で栽培する陸稲に分けることができ,それぞれの栽培法に適応した品種が育種されています。
 イネはモミの形状によって,大きくインド型と日本型に分けることができます。インド型イネは熱帯アジアや中国南部,南米やヨーロッパなどで栽培され,モミは細長く食味もパサパサしています。それに対し日本型イネは東アジアや北アメリカなどで栽培され,モミは丸味を帯び,粘り気の強い特徴があります。またデンプンの違いによって粳米と糯米に分けられます。
和名は漢名の音読みです。薬用としては,種子のデンプンをコメデンプンとして製剤のときの賦形剤として利用します。また漢方医学では,種子そのもの(玄米)をコウベイ(粳米)といい,麦門冬湯,白虎加人参湯などの処方に配剤されています。粳米と小麦の種子に麦芽を加えて糖化させた飴は,コウイ(膠飴)と呼ばれ体力や気力を益す作用があるとされ,小建中湯,大建中湯などに配剤されています.
 イネは主食や薬用以外でも,日本酒や味噌,醤油,煎餅などの原料として利用されています。精米時にでる糠は糠漬けとして,収穫後の稲藁は畳の床や堆肥として有機質肥料に利用されています。またお正月注連飾りには,緑色を帯びたあまり痛んでいない藁を利用しています.このようにイネは,主食のお米や薬用への利用から肥料や日常の生活に潤いを提供する品々にまで利用され,ほとんど無駄のない環境に優しい植物といえます。(磯田 進・鳥居塚 和生)

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