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ウラルカンゾウ
Glycyrrhiza uralensis FISHER
(
マメ科
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花
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−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
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中国,モンゴル,ロシアに分布し,乾燥した草原に生育している多年生草本植物です。根は地中深く伸び,ストロン(根茎)を横に伸長させます。葉は奇数羽状複葉で,小葉は短毛や腺毛で被われています。花は初夏から夏にかけて咲き,淡紅紫色から紅紫色をしています。果実は湾曲して短い刺があり,黒色で光沢がある種子をつけます。
和名のウラルカンゾウは,ロシアのウラル地方に分布しているところから名づけられました。また根やストロンが独特の甘みをもつことから植物名および生薬名ともにカンゾウ(甘草)の名が付けられました。生薬としての甘草は,鎮痛作用,去たん作用などを期待して漢方処方に配剤されています。そればかりでなく,甘草は漢方処方の70%以上に配剤されており矯味薬としての役割も担っています。また意外と知られていないことですが,お醤油やお菓子の甘味料,タバコのフレーバーとしても甘草は用いられ,その消費量は薬用での消費量の数倍といわれています。
八代将軍の徳川吉宗は,テレビドラマでは暴れん坊将軍の名で親しまれていますが,民政の安定や目安箱の設置など数多くの改革,いわゆる享保の改革を断行した人でもあります。その業績のひとつに,中国や朝鮮半島からの輸入に頼っていた甘草や薬用人参などの生薬の国産化を奨励したことが挙げられます。甘草については甲斐の国の高野家で発見され,近在の農家とともに栽培が行われるようになりました。ここで生産された甘草は中国から輸入した高価な甘草に勝るとも劣らない品質であったことから,その後,甲州甘草として幕府への重要な献上品になったということです。現在,高野家住宅は国指定重要文化財として保存されています。「甘草屋敷」の名称で親しまれ,甲州市では住宅も含め「薬草の花咲く歴史の公園」として一般公開しています。当時栽培されていた甘草は,研究の結果ウラルカンゾウであることが明らかとなっています。JR中央本線,塩山駅前にありますので,一度足を運ばれ,往時を偲んでみてはいかがでしょうか。(磯田 進・鳥居塚和生)
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