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今月の薬草
トウゴマ
Ricinus communis LINN. ( トウダイグサ科 )
トウゴマ  Ricinus communis LINN. (トウダイグサ科)花 トウゴマ  Ricinus communis LINN. (トウダイグサ科)果実
果実
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 アフリカから西アジアの乾燥地帯の原産といわれています。熱帯では低木状になり多年生ですが,温帯では1年生草本植物です。葉は掌状に切れ込み,花は秋に咲き雄花と雌花が総状につきます。果実は球形で柔らかい刺があり,種子は扁楕円形で表面は大理石のような模様があります。
 和名は中国(唐)より渡来し,ゴマのように油を採ったことから名づけられたもので「唐胡麻」の意味があります。薬用には種子から得られた脂肪油を用います。この油は僅かな特有の臭いがあり粘性が高く無色から淡黄色を呈しています。薬用名はヒマシ油といい瀉下薬や皮膚緩和剤として外用製剤に利用されます。下剤としての作用は強く,多量の服用で嘔吐や腹痛などの副作用が出現することも知られています。このような薬用のほか工業用の潤滑油や石鹸の原料として利用されています。また香料の合成原料を得る植物としても重要です。
 一方,種子自体にはポリペプチド毒素として知られるタンパク質の一種のリシンが含まれています。そのためトウゴマは有毒植物の一つとしても数えられています。リシンは生物化学兵器として悪用されることがあり,ホワイトハウスや議会宛に届いた郵便物に同封されていたり,ロンドン北部のアパートから押収されたため,テロリストたちが逮捕された事件は記憶に新しいものがあります。ただしリシンは油のしぼりかすに残り,ヒマシ油には溶け出すことはありません。
 このようなトウゴマは一方で,生け花の花材として私たちの生活に潤いをもたらしています。若芽や葉などが赤味を帯びたアカヒマ(ベニヒマ)が花材としてはよく用いられているようです。赤みを帯びていても,植物学的には緑色系と同一種として分類される植物です。大きな葉は水揚げが悪く萎れやすいので,湯揚げしたり,萎れた葉は水で濡らした後に新聞紙で包み込み,張りを持たせてから生けると失敗が少ないようです。(磯田 進・鳥居塚和生)

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