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今月の薬草
サラシナショウマ
Cimicifuga simplex WORMSKJORD ( キンポウゲ科 )
サラシナショウマ Cimicifuga simplex WORMSKJORD (キンポウゲ科)
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 林床や林縁などに生育し,草丈は150cmくらいになる大型の多年生草本植物です。葉は大きく,2〜3回羽状に切れ込んでいます。花は白色で小さく,甘い香りがあり秋に咲きます。花は総状に密につけるため,30cmくらいの花穂になりとても目立ちます。花弁のように見えるのは萼片で,本来の花弁は細く目立ちません。果実は袋状になり,種子は小さく鱗片を生じています。
 和名は芽生えの柔らかい葉を煮て水に晒して食べたところから名づけられたもので,晒菜升麻の意味があります。同様の意味で別名をヤサイ升麻ともいいます。升麻の語源は,葉が麻に似て薬性(薬としての性質)が上昇(上升)するものであるためといわれますが,よく判らないようです。生薬名はショウマといい,根茎を用います。消炎鎮痛,発汗解表,痔疾の治療などを目的とした漢方処方に配剤されています。
 さて,ショウマと名がつく植物は意外に多いものです。例えば同じキンポウゲ科のルイヨウショウマは,葉がとてもよく似ているところから漢字で類葉升麻と表記します。花は初夏に咲き,花穂も10cmくらいと小ぶりなため清楚さがあります。果実は球形で黒紫色に熟します。また,レンゲショウマ(蓮華升麻)は葉が羽状に深く切れ込み,花がハスによく似ていることから名づけられました。日本の固有属としてもよく知られています。花は大きく淡紫色で夏に下向きに咲き,袋状の果実が倍以上の大きさになります。ハスの花に勝るとも劣らないほどの幽玄さが感じられ,ブナ林など薄暗い林床,特に霧の漂う中で咲く姿は,目にするとつい足を止めてしまうほどの美しさです。
 このほかユキノシタ科やバラ科などの植物にもショウマの名がつけられているものがあります。そのいずれもが葉身が羽状に深く切れ込んでいるという共通点があり,花よりも葉の特徴に由来する命名のようです。(磯田 進・鳥居塚和生)

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