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今月の薬草
サンショウ
Zanthoxylum piperitum DC. ( ミカン科 )
サンショウ Zanthoxylum piperitum DC. (ミカン科)果実
果実
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 日本から朝鮮半島,中国に分布している低木性で,雌雄異株の夏緑広葉樹です。葉は羽状複葉で,葉の基部には対生する刺を生じます。花は雌花,雄花ともに緑黄色で小さく,春に咲きます。果実は球形で秋に紅熟し,後に開裂して中から黒色の丸い種子を出します。枝に生じる刺は収穫時に苦労することから,現在は刺のないアサクラザンショウを栽培しています。このアサクラザンショウは江戸時代に兵庫県北部の朝倉山で発見されたものですが,残念ながら実った種子を播いても再び刺を生じます。そのため一般的には,有刺種を台木にした接ぎ木苗を栽培しています。
 薬用には成熟した果皮を用い,できるだけ果皮から丸い種子を取り除いたものを利用します。生薬名もサンショウ(山椒)といい,辛味性芳香性健胃薬とします。また料理などの香辛料としても用います。
 山椒の古名は「はじかみ」といい,古事記にも登場するほど古くから薬用や香辛料として利用されていました。香ばしい鰻の蒲焼きは,食べる前からよだれが出てきますが,山椒の香りと辛味は鰻の生臭さを消すことから,粉末にして振りかけます。しかし室町時代の「大草家料理書」には,「(鰻の蒲焼きに)山椒味噌を付けて出してもよい」という記載があり,現在のように粉山椒を振りかける習慣は江戸時代に入ってからのようです。 また山椒の果実は小粒ですが,とても辛味が強いことから,「山椒は小粒でもピリリと辛い」ということわざが生まれました。これは身体が小柄であったり,身分が低くとも優れた才能を持っていることもあり,侮ってはいけないとの戒めの意味があります。(磯田 進)

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