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今月の薬草
ジャノヒゲ
Ophiopogon japonicus KER-GAWLER ( ユリ科 )
ジャノヒゲ Ophiopogon japonicus KER-GAWLER (ユリ科)花 ジャノヒゲ Ophiopogon japonicus KER-GAWLER (ユリ科)果実
果実
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 日本,朝鮮半島,中国に分布し,林床などに生育する常緑の多年生草本植物で,しばしば一般の家庭園でも見受けられます。夏に白色から淡紫色の花をやや下向きに付け,種子は球形で晩秋から初冬にかけて濃青色に熟します。
 和名は細長い葉を蛇の髭に例えたものとされています。蛇には髭がありませんが,蛇と想像上の動物である龍(ドラゴン)はしばしば混同されていたようなので,本当は由来は「龍の髭」と考えるのが正しいのではないでしょうか。濃青色に輝く丸い種子をじっと見ていると,まるで龍の目のよう思えてきませんか。
 薬用には根が紡錘状に肥大した部分を用います。生薬名はバクモンドウ(麦門冬)といって,鎮咳去たん薬として用います。これを用いる代表的な漢方薬は,何といっても麦門冬湯でしょう。
 近頃の子供たちは,外で遊んだり,遊び道具を自分たちで作ることはせず,もっぱらテレビゲームをはじめとする市販の玩具を使った室内遊びが主流になっているようです。しかし,子供たちが遊びの天才といわれていた昔は,親から玩具を買ってもらえる子供は僅かでしたので,身近にある素材を何でも遊びの道具にしたものです。そのような時代,ジャノヒゲの種子は玩具の素材の一つでした。濃青色の種皮を取り除くと,半透明の白く丸い胚乳が顔を出します。この胚乳はよく弾むことから,力任せに硬いコンクリート面に叩きつけ,どのくらいの高さまでバウンドするかを競い合っていました。豊かになったせいか,何でも遊びの道具にしてしまう発想が妙に懐かしく感じられてしまう昨今です。(磯田 進)

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