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今月の薬草
アマチャ
Hydrangea macrophylla SERINGEvar. thunbergii MAKINO ( ユキノシタ科 )
アマチャ Hydrangea macrophylla SERINGE var. thunbergii MAKINO (ユキノシタ科)花
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 本州の中部から関東地方に分布し,林床に稀にみられる落葉低木です。アジサイと同じ仲間で,花は白色から白青色で梅雨の頃に咲きはじめます。花の形は複雑です。中央部に小さな花がたくさん集まり,その周辺を4枚の花びらをもった6個の装飾花が取り囲んでいます。中心部分の花は雄しべと雌しべの両方をもった両性花ですが,周辺の装飾花は雄しべも雌しべも退化した中性花で,花びらに見えるのはがく片です。がく片は初め白色ですが,後に淡紅色を帯びてくるようになります。
 「アマチャ」は葉を煎じたものを甘茶として利用することから名づけられた和名で,漢名ではありません。薬用には葉や柔らかい枝先を用います。生薬名もアマチャ(甘茶)といい,矯味薬として用います。生の葉には甘みはなく,これをいったん乾燥したのち再び湿り気を与えて発酵させると甘味成分(フィロズルシン)が生成して甘くなるのです。
 4月8日は灌仏会です。今ではこのお祭りを知らない人が多くなりましたが,この日はお釈迦様の誕生日とされ,その生誕像に甘茶(煎じ液)を注ぎかけてお誕生をお祝いする儀式(仏事)です。生誕像は花御堂に安置されているため,花祭りとか花供養とも呼ばれて広く親しまれていました。生誕像に注いだ甘茶には功徳があると信じられ,参拝者は必ず家に持ち帰って家族全員で飲み,無病息災を願いました。ちなみに,お釈迦様の生誕像に甘茶を注ぐ儀式はそれほど古い風習ではなく,江戸時代からだそうです。(磯田 進)

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