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今月の薬草
エビスグサ
Cassia obtusifolia L. ( マメ科 )
エビスグサ Cassia obtusifolia L. (マメ科)花
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 熱帯から温帯にかけて広く栽培されている南アメリカ原産の一年生草本植物で,夏に黄色い花をつけます。果実は細長くやや湾曲し,種子はひし形状で艶があります。日本には享保年間(1716〜36),中国南部より渡来しました。
 和名の「エビス」は七福神の「恵比寿様」と勘違いされそうですが,実際は遠い異国から渡来したという意味の「夷草」に由来します。種子は緩下・利尿に用いられ,生薬名をケツメイシ(決明子)といいます。また,「ハブ茶」の名で古くから健康茶として利用されています。
 ところで,皆さんはエビスグサが農薬の代わりに使われているのを御存じでしょうか。近年,健康に対する関心が高まり,無農薬野菜が好まれるようになりましたが,農薬を使わなければ病害虫によって深刻な被害を受けます。野菜(特に根菜類)は,ネグサレセンチュウが根を食べることによって組織の一部が斑点状に腐り,商品価値が著しく損なわれます。が,畑にエビスグサを植えておくと線虫の数が激減するそうです。同じような作用をもつ植物として,マリーゴールドもよく知られています。ダイコンの生産者の中には,線虫の防除を目的としてこうした植物を栽培する農家が増えてきました。
 エビスグサは種子が生薬として利用されるだけでなく,有害センチュウに対して駆除作用ももつ不思議な植物です。(磯田 進)

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