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今月の薬草
アンズ
Prunus armeniaca L.var.ansu MAXIM. ( バラ科 )
アンズ Prunus armeniaca L.var.ansu MAXIM. (バラ科)花 アンズ Prunus armeniaca L.var.ansu MAXIM. (バラ科)果実
果実
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 国原産の落葉小高木。日本へは奈良時代(8世紀ころ)にウメなどと一緒に渡来したといわれ,平城京遺跡からも出土しています。各地で果樹として盛んに栽培され,多くの品種が育種されています。春に葉より先に白色から淡紅色の花を付け,花が終わると果実を作り,やがて黄紅色に熟します。
 和名は,牧野富太郎博士によれば,杏子の唐読みがそのまま用いられたということです。また英語のアプリコット(apricot)はアラビア語に由来します。薬用には種子が鎮咳薬として用いられ,その生薬名をキョウニン(杏仁)といいます。
 長野県更埴市周辺はアンズの里としてよく知られています。4月中旬ころ松本方面から高速道路長野道を走ると,モモほどの華やかさはありませんが,淡紅色や白色の絨毯を引き詰めたような景色が目に飛び込んできます。日本では果樹として栽培され,生食用の他,薫り高いアンズ酒やジャムとして利用されています。同じ仲間(Prunus属)のウメやモモなどと比べると,その影はやや薄いようです。
 中国では,昔から食用や薬用として利用されてきました。その結果,多くの故事成語が言い伝えられています。その中にあって,日本でも馴染みの深い故事成語は何といっても名医の代名詞「杏林」でしょう。
 三国時代の医師,董奉(とうほう)は貧しい患者から治療代を取ることをしませんでした。その代わり完治した重病患者には5株,軽い患者には1株の苗木を植えさせたところ,瞬く間に立派なアンズの林になりました。以後,人間的にも優れた名医を「杏林」と呼ぶようになったということです。(磯田 進)

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