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今月の薬草
ナンテン
Nandina domestica THUNB. ( メギ科 )
ナンテン Nandina domestica THUNB. (メギ科)花 ナンテン Nandina domestica THUNB. (メギ科)果実
果実
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 ナンテンは木本性のように見えますが,これは茎が木質化しているからであって,実は常緑の草本植物なのです。我が国では古くから栽培されていて,自生種か否かは定かではありませんが,東海地方以西から中国大陸にかけて広く分布しています。初夏から夏にかけて白色の花を付け,球形の果実が晩秋から初冬にかけて紅熟します。
 和名は漢名の南天竹あるいは南天燭が「南天」に転訛したものです。果実は消炎薬や鎮咳薬として用いられ,生薬名をナンテンジツ(南天実)といいます。 まれに果実が白いシロミナンテンがあり,珍重されますが,薬としての効果は赤いものと違いはないようです。
 ナンテンは「難転(難を転じて福となす)」の語呂合わせから,縁起ものとして好まれています。お祝い事の席に出される赤飯はアズキやササゲを入れて炊きあげたものですが,昔はこの赤飯の上にナンテンの葉が添えられていたものです。葉は黄色ブドウ球菌など食中毒を引き起こす菌に対して抗菌力があるとされてはいますが,葉を数枚添えただけでその効果を期待するのは無理でしょう。ともあれ,赤飯にナンテンの葉を添えるというのはなかなか風流なものですね。これからも残しておきたい日本の食文化のひとつです。何事も簡略化される昨今,残念なことに,この風習は,せいぜい赤飯の折詰をナンテンが描かれている包装紙で包む形で残っているようです。(磯田 進)

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