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今月の薬草
キキョウ
Platycodon grandiflorum A. DC ( キキョウ科 )
キキョウ Platycodon grandiflorum A. DC (キキョウ科)花
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 キキョウはやや乾燥した草原に生育する多年草で,日本を含む東アジアに広く分布し,7月から8月にかけて青紫色の花を咲かせます。和名は漢名の桔梗を音読みしたものです。
 薬用には根を用い,生薬名もキキョウ(桔梗)といいます。主に消炎排膿や鎮咳去痰を目的として漢方薬に配剤されます。また今では元旦を祝う飲み物となってしまったお屠蘇にも配合されています。
 万葉集に詠まれる「朝がほ」は,アサガオではなく,キキョウという説が有力です。根拠は,アサガオは奈良時代に薬草(下剤)として渡来したもので、当時アサガオを目にする人はほとんどいなかったはずと考えられるからです。また,古くはアリノヒフキと呼ばれていました。アリが花をかじると,蟻酸によって青紫色の花が赤く変色します。この現象を「蟻の火吹き」と名付けたのでしょう。当時の都人たちの観察力は鋭かったのですね。
 秋の七草の一つにも加えられ,紋所の桔梗や図柄の花桔梗に用いられるなど,昔から庶民に親しまれてきたキキョウですが,最近,自生地の減少や環境の悪化に伴って野生種が急速に減少しているようです。この可憐な花が庭や植物園でしか見ることができないといったことにならないよう,皆で保護したいものです。(磯田 進)

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