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今月の薬草
モモ
Prunus persica BATSCH ( バラ科 )
モモ Prunus persica BATSCH (バラ科)花
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 中国原産の落葉小高木。弥生時代の遺跡より炭化した核果が出土たことから,農耕文化とともに渡来したといわれています。通常,花は淡紅色で花びらは5枚,4月初旬から春を謳歌するかのように咲き出します。
 和名は諸説あり定かではありませんが,日本では古来外形が丸く中が硬いものをモモといったと,牧野富太郎博士はその由来を説明しています。薬用には,硬い核果の中にある種子を用います。生薬名をトウニン(桃仁)といい,婦人薬や寫下薬などを目的とした漢方処方に配剤されます。しかし日本で栽培されている品種は種子が小さく,薬用には用いられません。
 旧暦の3月3日は,女の子のお祝い「雛祭り」です。その季節になると桃の花が咲きだすこともあり、桃の節句として親しまれています。山梨県のような栽培地では,花のシーズンになると,ピンクの絨毯を引き詰めたような景色を見ることができます。特に春霞のかかった夕刻は,日が斜めに差し込んで幻想的な感じになります。桃源郷は陶淵明作の「桃花源記」に由来し,私たちが住んでいる俗世間を離れた別天地や理想郷を指しますが,まさに桃源郷とはこのような光景ではないかと,錯覚に陥るほどのすばらしさです。お忙しい日々の一時,現代の桃源郷でその疲れを癒してみてはいかがでしょうか。(磯田 進)

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