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今月の薬草
コブシ
Magnolia praecocissima KOIDZ. ( モクレン科 )
コブシ Magnolia praecocissima KOIDZ (モクレン科)花
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 日本各地および韓国の済州島に分布し,日当たりのよい雑木林に見られる落葉高木です。花芽は葉芽と比べ大きく,ビロード状の毛で覆われています。花は春の気配が感じられる頃,葉に先駆けて咲き出します。花びらは6枚で白色,中央に多数の雄しべと雌しべがあり,強い芳香があります。果実は長楕円形,熟すと赤色の丸い種子が露出します。
 和名は果実を握り拳に見立てて名づけられました。薬用にはつぼみを利用します。生薬名をシンイ(辛夷)といい,鎮痛薬や消炎薬として頭痛や蓄膿症などに応用します。また地方によっては,より芳香の強いタムシバを用いることもあります。元々の辛夷は中国原産のモクレンのつぼみです。濃紅紫色の大きな花を付けるモクレンも花木として栽培されています。
 昔から農家の人たちはコブシの花が咲き出す季節を心待ちにしています。その理由はコブシが咲き出す頃は遅霜の心配も少なくなり,農作業を始める合図ともなっているからです。そして満開の花を見ながら秋の収穫に思いを馳せ,豊作を願って,手にした鍬に一段と力が入る頃でもあります。私が住んでいる富士山北麓に遅い春が訪れる頃,純白の花は残雪の富士山と青い空によく調和し,地元の人たちだけではなく,観光客の目も楽しませてくれます。(磯田 進)

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