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今月の薬草
センブリ
Swertia japonica MAKINO ( リンドウ科 )
センブリ Swertia japonica MAKINO (リンドウ科)花
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 日本各地,朝鮮半島から中国にかけて分布する2年生の草本植物で,日当たりのよいやや乾燥した山野に生育します。花は秋に咲き,花冠は淡紫色の脈がある白色で,深く5つに裂けています。
 和名は千回振り出し(煎じ)ても苦味を感じるところから名づけられたといわれますが,千回まではもたないでしょう。薬用には開花期の全草を用い,生薬名をセンブリまたはトウヤク(当薬)といい,苦味健胃薬および整腸薬として用います。苦味健胃薬としての利用は,西洋医学の影響を受け始めた江戸時代末期以降といわれています。それまでは衣類についたノミやシラミなどの殺虫剤として煎じ液で洗ったり,屏風などの虫食い防止のため糊に混ぜて利用していました。
 「良薬は口に苦し」といいますと,多くの方はセンブリを思い浮かべるのではないでしょうか。しかし,このことわざは孔子の教えで,「忠言耳に逆う」と続き,特に薬草の効果について説明しているものではありません。これは「病気に効果のある良い薬は,苦くてとても飲みにくいものです。忠言や忠告は聞いて快いものではないが,本人のためになる」という意味で,現代でも通じる人生の良薬といえるでしょう。
(磯田 進)

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